老若男女問わず幅広い世代からの支持を集める米津玄師さん。
彼の魅力は多岐に渡りますが、その大きな一つに「美しい歌詞」というものがあると強く感じます。
彼によって紡がれるまるで詩を思わせるような美しい言葉たちは聴く者の心を動かします。
楽曲の中で垣間見える言葉選びの秀逸さには、とてつもない才能やセンスを感じずにはいられません。
そこで今回は、米津玄師さんの曲の中から、とりわけ歌詞が美しいものを7つ厳選して紹介していきたいと思います!
彼の凄みに触れたいという方にぜひチェックしていただきたい内容です。
それでは早速いきましょう!
米津玄師の美しい歌詞7選
アイネクライネ
一人の少女が運命の人と出会って変わっていく様子を描いた、米津さんの曲の中でもとりわけ有名な一曲「アイネクライネ」
この曲も美しい歌詞が際立ちます。
目の前のすべてがぼやけては溶けていくような 奇跡で溢れて足りないや
1番サビのこの歌詞において、少女が嬉し涙を流す様子をここまで美しい表現で言い換えてしまうのには感嘆するばかりです…
米津さんの歌詞には直接的な言葉を使わないからこそ感じられる魅力があります。
閉じた瞼さえ鮮やかに彩るために そのために何ができるかな
また2番サビのこちらの歌詞ではちょっとした矛盾をはらむ表現だからこそ、何とも言えない味わい深さを感じることができます。
このように単純明快ではなく、ちょっと考えさせられるような文学的な表現が、彼の楽曲を唯一無二のものにしています。
関連:【 ”運命の出会い”が少女にもたらす変化】「アイネクライネ」の歌詞の意味を解釈
メトロノーム
きっと僕らは二つ並んだメトロノームみたいに 刻んでいた互いのテンポは同じでいたのに いつしか少しずつずれ始めていた 時間が経つほど離れていくのを止められなくて
この歌詞が象徴的ですが、徐々に離れていく二人の関係を「メトロノーム」という秀逸な喩えを用いて表している一曲です。
ほんの少しだけテンポのズレたものを二つ並べると、ぴったり一緒になったりバラバラになったりを繰り返すんだよね。そういうものを見て、人と人とのありかたにに置き換えられるような気がしたのが最初だったと思う。 https://t.co/YT50K63Zv8
— 米津玄師 ハチ (@hachi_08) October 11, 2015
彼自身もこう語るように、メトロノームの特徴をここまでうまく歌詞に落とし込んでしまうのは、さすがとしか言いようがありません。
これからも同じテンポで生き続けたら 地球の裏側でいつか また出会えるかな
そして心の奥ではいつかまた一緒になれるようにと願う心情が、またメトロノームを活かした綺麗な表現で表されています。
美しい…
Lemon
亡くなった人への思いをありありと綴った、米津さん一番の代表曲「Lemon」
この曲も歌詞の表現がものすごく美しいです。
胸に残り離れない苦いレモンの匂い
やはりこの歌詞がとても印象的。
もちろん死を悼む暗い気持ちがありながらも、どこか希望のようなポジティブな感情もあるということが「レモン」で表現されています。
苦みや酸味の中にも、爽快さや晴れ晴れとしたものが感じられるレモン。
そのレモンの持つ特徴が、故人への思いをとてもうまく表していることに気付かされます。
切り分けた果実の片方のように 今でもあなたは私の光
そしてラストではスペインのことわざを思わせる表現から、故人との強い結びつきを感じさせてくれます。
そこに地元瀬戸内の要素も入れてくるという離れ業。
タイトルとも見事にマッチした美しい表現です…
orion
二人の関係を冬の星座に喩えて歌ったラブソング「orion」
もう二度と離れないように あなたと二人 あの星座のように結んでほしくて
サビでの、思いを寄せる人と強く結ばれたいという感情をありありと感じることができるような表現がたまりません…
「星座」という強い結び付きが感じられるものを用いることで、その思いの強さを感じられるものになっています。
落ちてきたんだ 僕の頭上に 煌めく星 泣きそうなくらいに 触れていたんだ
またCメロの、目の前に満天の星空があるような情景を浮かべさせてくれるような歌詞もとても美しく印象的。
冬の夜の寒空の下で聴きたくなるような魅力があります。
春雷
春にぴったりな一曲「春雷」
現れたそれは春の真っ最中 えも言えぬまま輝いていた
どんな言葉もどんな手振りも足りやしないみたいだその日から僕の胸には嵐が 住み着いたまま離れないんだ
人の声を借りた 蒼い眼の落雷だ
まさに青天の霹靂のような出会いを表した冒頭から、嵐のように激しく揺れ動く内面の様子が美しい日本語で、かつ語尾で「a」の韻が踏まれながら歌われます。
その後も基本的にこの韻の縛りの中で物語が展開されていくのは見事としか言いようがありません。
また「和」のテイストも混ぜられたメロディも印象的で、米津さんのセンスの凄まじさをこれでもかというほど感じられるような一曲です。
Flamingo
クセになるようなメロディが印象的な「Flamingo」
美しいとされているけど、よく見るとある種の気持ち悪さがあるようなものの連想としてフラミンゴを用いたのだとか。
古語のような日本語をも用いながら、遊女に入れ込んでしまった一人の男の様子がこちらも韻を踏まれながら歌われます。
宵闇に 爪弾き 悲しみに雨曝し 花曇り
枯れた街 にべもなし 佗びしげに 鼻垂らし へらへらり笑えない このチンケな泥仕合 唐紅の髪飾り あらましき恋敵
触りたい ベルベットのまなじりに 薄ら寒い笑みに
御目通り 有難し 闇雲に 舞い上がり 上滑り
虚仮威し 口遊み 狼狽に 軽はずみ 阿呆晒し愛おしい その声だけ聴いていたい 半端に稼いだ泡銭 タカリ出す昼鳶
下らない このステージで光るのは あなただけでもいい
氷雨に打たれて鼻垂らし あたしは右手にねこじゃらし
今日日この程度じゃ騙せない 間で彷徨う常しえに地獄の閻魔に申し入り あの子を見受けておくんなまし
酔いどれ張り子の物語 やったれ死ぬまで猿芝居
この曲では、語尾に「i」の音を持つ言葉を基調としながら曲が展開されていくのが印象的。(Aメロは5文字という縛りもあります)
米津さんの曲ではこのようによく韻が踏まれますが、これにより聞いていてどことなく気持ちいいリズム感が生まれているんですよね。
これを可能にする彼の語彙力の高さは本当にとてつもない…
それと同時に「人間の浅ましさ」のようなものを感じられる、米津さんらしさも全開な一曲です。
Pale Blue
ドラマ「リコカツ」の主題歌として作られた男女の別れを歌った一曲「Pale Blue」
ちなみに「ペールブルー」とは「淡い青色」の意味。
それは水もやらず枯れたエーデルワイス 黒ずみ出す耳飾り
それはひどく丈のずれたオートクチュール ほつれていくボタンの穴
二人の関係にどこか綻びが生じ、だんだんとずれが生じる様子がうまく表現されている一節が魅力的です。
二つが対比されながらも、言葉の雰囲気や音の響きにどこか共通点を感じられるところもまた面白いですよね。
よく見ていくと歌詞それ自体の意味だけでなく、口にした時の語感の良さまで考えて作られているということにも驚かされます。
まとめ
今回は、米津玄師さんの美しい歌詞が魅力的な曲7選を紹介してきました!
米津さんの紡ぐ言葉はとても美しく魅了されてしまうものばかりです。
音楽性はもちろんのこと、こうした作詞能力の高さを見ても、やはり彼は「天才」としか表現しようがありません…
詩人のような繊細な言葉を扱うセンスに加えて、具体物と抽象的なものとの間に共通点を見出す能力の高さが、こうした美しい歌詞や比喩表現を可能にしているのではと感じます。
今回紹介したもの以外でも素晴らしい表現が多々あるので、ぜひ他の曲も聴いてみていただければと思います。
この記事が、米津さんの魅力をさらに知り、心動かされるような体験をするきっかけとなれば幸いです!